木曜日, 9月 03, 2009

 

この手があったか!



 この本の解説にもあったが、「この手があったか!」という感じ。
 織田信長が好きで、子どものころからいろいろと読んできたが、安土城の築城を、ここまで丁寧に書いて長編小説にまとめてしまうということに感動した。信長が好きであれば、安土城の存在は、あまりにあたりまえで、築城にこのようなドラマがあったということに思いが至らなかった。

 織田信長が時代を動かしている、まさに、そのときに、安土山で築城を続ける大工たち。もちろん、安土の現場でも、材料の取り寄せでも、いろいろなドラマが展開する。一方、安土山の外では大砲の出現など、技術革新によって戦い方も変わる。動きの激しい外の世界に比べると、安土山では時代が止まっているようにさえ感じられる。そして、外の変化が築城にも影響する。

 最後に、安土城が燃え落ちるとき、ひとつの時代が終焉を迎える。

 敵役の六角承貞が過去の亡霊としての役割を担い、安土城の築城開始が新時代を予感させ、築城中は外の世界の激動を感じさせ、そして、安土城の炎上によって時代の終焉を感じさせる。

ラベル:


日曜日, 10月 12, 2008

 

なみだ きら子最後の事件簿

 波田煌子の推理は、決して思いつきや直感ではなく、本人の頭の回転が速すぎるため、自分自身でも論理的に説明がつかないだけなのだそうです。
 本シリーズ最大の敵・・・幼少時のきら子の体験、そして、これまでの事件が、ほぼ一つにつながる?
 
 シリーズのなかでは、きら子が比較的まともであり、謎解きも「比較的」まともな長編です。これまでのテイストとは「若干」異なりますが、これまでの作品の雰囲気が好きな人であれば、楽しく一気に読めると思います。



水曜日, 7月 23, 2008

 

北方謙三の土方歳三

 土方歳三と山南の友情、伊藤甲子太郎が実は表面だけを語る小人物であった等は、「少し意外」
 徳川慶喜の大阪城離脱(鳥羽伏見の戦い)の真相は、植民地化を防ぎ、新国家を建設して日本、ひいてはアジア全体を列強から守ることにつながる「不戦」の戦略であったというのは、「なるほど。意外」

 但し、「夢に生きた土方」と「夢を失った近藤」、「不戦の誓いを貫いた慶喜」というのは、小説のキャラクターづくりとしては面白いが、甲州鎮撫隊で近藤と土方が偽名をつかった理由の説明がつかないし、慶喜が大政奉還の当初は新政府に入る意欲が満々だったこととそぐわない・・・なので、あくまでも「史実」ではない「小説」として楽しむことになる。「史実」を扱った新撰組ものは、やはり「燃えよ剣」(司馬遼太郎)でしょう。

 明治維新→函館戦争の流れの中にロマンを見たい人向けの土方歳三本です。



ラベル:


 

藤原純友を見直しました

「海賊」=ただの暴れ者という印象しかなかった藤原純友ですが、実は藤原北家の血をひき、出世ののぞみもあったのに「自由に生きたい」という思いを貫き、やがて海を知って、「海の上では誰でも自由であるべきだ」という考えを実践していって漁師たちの心をつかみ・・・大和朝廷による支配の「終わりのはじまり」にあたる時代を、北方謙三が独自の視点で切り取っていく。



ラベル:


金曜日, 6月 06, 2008

 
 日本の高校生が、交換留学でニュージーランドへ行き、留学期間を超え、私費留学へ切り替えて過ごした高校生活の記録。この本によれば、ニューヨークの高校は、自分の力で論理的に考え、社会の事象にも深い関心と洞察力を持った人格を育成するという。いじめ問題も、生徒たちの力で解決していく。
 やはり、日本の教育は、根本的なところが間違っているというか、「個人の幸せ」「個人の自立」に関心を持たないというか・・・とにかく文部科学賞は、こういう本を読んでよく考えて欲しい。


 
 原爆で、父を喪い、友を喪い、自分だけが生き残ったことが申し訳なくて、「ただひっそりと生きていたい」と望む女性が恋をする・・・原爆の悲惨さを訴える力を持った作品であると同時に、身近な人を事故や犯罪等で喪った人の心理を描く、普遍性を持った作品。

ラベル:


月曜日, 5月 19, 2008

 

水滸伝 ~ 北方謙三の世界

 月に1冊づつ読んで、19ヶ月楽しめました。
 以前、水滸伝の和訳(駒田信二さんだったと思う)を読んだときは、「ひとつひとつの話は面白いけれど、まとまりがなくて、だんだん飽きてくる」という印象だった。
 北方謙三の水滸伝は、宋末期という時代背景を踏まえ、好漢達がなぜ反乱に走ったのか、そして、末期とはいえ、まだまだ強大な宋とどう戦ったのかを基軸に、宋の宿敵である遼における女真族の反乱の序章を予告編的に組み入れながら、壮大なストーリーがつむぎだされていく。全く、飽きる暇がなかった。「月に1冊」という自制をしていなければ、1~2週間ぐらいぶっつづけで読んでいたかも知れないと思わせる力作である。

ラベル:


金曜日, 2月 15, 2008

 

子供の好奇心をのばし、考える力を身につける

「ゆとり教育」の失敗とか、「授業時間の増加」など、教育制度の世界では、本質的なところを見ていないと思う。
 それは、「考える力」の養成。
 学校の勉強やテストだけを考えるならば、知識を詰め込んでいくことになるのかもしれないが、本当に大切なのは、子供の好奇心をのばし、考える力を身につけさせることである。この本は、「考える力」を身につけるための様々な方法が提案されており、うなずけるものが多い。
 小学校中学年以上の子供には読ませたい一冊。

日曜日, 2月 10, 2008

 

本は買わなきゃもったいない

 
 書いてある内容は、IT機器を当たり前のように使いながら情報を収集し、活用していくという、まっとうな内容です。
 ただ、文章に力があり(わかりやすく、説得力があり、かつ、よく整理されている)、がんばろうという気持ちにさせてくれる。
 すべてのページを気に入っているが、なかでも、いちばん、印象に残っている部分は、「1人で情報を得たり、考えたりすることには限りがある。本により、先人達の知恵を分け与えてもらえる」「本を書くという作業は、その著者が何年もかけて情報収集し、整理し、かつ、関係者が膨大な時間をかけてきたものだから、それが数千円で買えてしまうというのは安い。」「良書にめぐりあうためには、多くの本を買い、読まなければならない」という部分。
 とにかく、買って損はない。

This page is powered by Blogger. Isn't yours?