水曜日, 5月 31, 2006
鯨統一郎ワールド 現代日本の闇編
いつもの鯨統一郎作品に比べると、かすざきさんを除いて、あまり印象に残る登場人物もおらず、文章もあまり好きになれなかった。
しかし、ラストの謎解きのあたりは、やはり秀逸でした。いろいろな事件を一気に解決して。
コタバル地図
コタバル観光
日曜日, 5月 28, 2006
三国志雑感
三国志は、長いこと興味がなかったが、この人形劇に出てくる人形達や声優陣が魅力的で、そこから三国志が好きになった。・・・しかし、人形劇三国志ってBOXでも3集に分かれてるんですねぇ・・・。
そして吉川英治を読んだ。ただ、人形劇にしても、吉川英治にしても、漫画チックで、どうにも馴染めなかった。
吉川英治に比べて、北方謙三の方が、人物の行動、考え方がリアルで、納得できた。
ラベル: 中国史
土曜日, 5月 27, 2006
マイクル・クライトンの描く、中世への時間旅行
歴史学者と学生が、中世ヨーロッパへ時間旅行して、血なまぐさい世界の中で必死に生き抜いて行くという冒険活劇。マイクル・クライトンらしいというか、タイムトラベルについても、きちんと現在の物理学を踏まえて書かれている。
疑問点。
タイムトラベルの理屈については、現在の我々の世界と少しづつ違う多元宇宙(パラレルワールド)が無限に存在し、そのどれかに人と物を送り込むという見解に立っている。一方で、過去を変えられるかというタイムパラドックスの問題については、例えば、「過去に戻って親を殺そうと思っても、過去の世界で親に会えないかも知れないし、武器が壊れるかも知れないし、そもそも殺そうという気持ちになれないかもしれない」というように、何らかの障害が必ず生じるという見解に立っている。
しかし、タイムパラドックスが起きるのは、同じ時間軸に旅するからであって、パラレルワールドであれば時間軸自体が異なるのだから、タイムパラドックスの問題はそれだけで解決されるはず。なので、作品中の、タイムパラドックスの説明はおかしいと思った。
それと、これは説明としておかしいというのではないが、「なぜ時間旅行ができるのか」という原理の説明のところでは、「そんな、無責任な・・・」(笑)と思った。
時間旅行に関する、現在の物理学者の理論状況がわかりやすく説明されており、「タイムライン」の副読本としても最適。
金曜日, 5月 26, 2006
キングズブリッジ大聖堂にまつわる物語
12世紀のイギリス。王位継承戦争を時代背景とし、大聖堂に取り憑かれた男達、大工のトムと神父のフィリップによるキングズブリッジ大聖堂建築へかける執念を物語の骨格としながら、さらに、アリエナ、リチャード姉弟の波瀾万丈の人生、悪役ウィリアム等の徹底した悪さ、さらに、昔の聖職者たちの悪事も暴かれていく。
・・・というように、いろいろな物語が組み合わさって、交響曲のように、物語が響きあう。
当時の時代の野蛮さと文化的雰囲気が混じり合う空気もわかるし、純粋で誠実なフィリップ、生命力旺盛なアリエナ、とことん野蛮なウィリアムの3人に代表されるような、濃いい登場人物。
1冊で、いくつもの味が楽しめる、お買い得な小説だと思います。
ラベル: ヨーロッパ史
火曜日, 5月 23, 2006
斉藤道三、織田信長、明智光秀の一生
歴史に興味を持ち始めるきっかけとなった作品。油売りから身を興して一国を盗った斉藤道三、その娘である濃姫を嫁に取り天下統一に王手をかけた織田信長、その信長を暗殺し、最後は小栗栖に果てた光秀。それぞれの生き方が、華々しい。
高橋英樹の信長、近藤雅臣の光秀、松坂慶子の濃姫も、それぞれ格好良く美しい。平幹二郎の道三もくせが強くて格好良い。
この本が正しいかは別として、斉藤道三は2人だったというのが、最近では有力らしい(親子2世代?)
ラベル: 日本史
日曜日, 5月 21, 2006
竹内久美子先生の功罪?
トンデモ本として紹介されることもあり、また、実際、トンデモないことが書いてあったりもするのですが、リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を紹介する箇所、歴史的な経緯については非常にわかりやすく書いてあり、現在の遺伝子に注目した進化論や動物行動学の入門としてお薦めできる一冊です。
金曜日, 5月 19, 2006
とんち探偵一休さん 鯨統一郎
あの、ほのぼのとした一休さんのとんち話の裏に、こんな陰謀が隠されていたとは・・・
一休さんと将軍さま(義満)とのとんち合戦に、一休さんの命がかかっていたとは・・・
義満は「病死」と発表されたが、実は首つり死体で発見されていたとは・・・
鯨統一郎の、縦横無尽な歴史解釈が冴える(まあ、歴史エンターテインメントということで)。
しかし、あの将軍・義満を、ここまで嫌らしい「オヤジ」に貶めてしまってよいのだろうか・・・
金閣寺
火曜日, 5月 16, 2006
魔法の国ザンスシリーズ 第1作
カメレオンの呪文
知る人ぞ知る、異色ファンタジー。
ビンク、トレントといった魅力的なキャラクター。論理とダジャレで構築された世界。
ふざけすぎず、まじめすぎない絶妙のユーモアと、謎解き。
シリーズはその後も続き、次の世代、その次の世代へとつながっていく。
ファンタジー好きの人にはお勧め。
知る人ぞ知る、異色ファンタジー。
ビンク、トレントといった魅力的なキャラクター。論理とダジャレで構築された世界。
ふざけすぎず、まじめすぎない絶妙のユーモアと、謎解き。
シリーズはその後も続き、次の世代、その次の世代へとつながっていく。
ファンタジー好きの人にはお勧め。
日曜日, 5月 14, 2006
プラハの春、ベルリンの秋に続く完結編?
佐川急便事件や北朝鮮の拉致事件、政官業の癒着と腐敗というところがからめていく展開。プラハの春、ベルリンの秋で社会主義体制における官僚の腐敗等を問題提起し、本作では日本の官僚の腐敗を問題にするということか?・・・と思いながら読んだけれども、その意味では期待はずれ。
オウムの事件などをからめつつ、国際謀略小説としては面白いが、プラハの春、ベルリンの秋のような、国際政治そのものを舞台にした恋愛小説というものではない。官僚批判にしても、そこいらのおじさんが酒を飲みながら批判しているのとあまり変わらない。
とにかく、国際謀略小説として読めば、まあ、面白いと思う。
・・・「カリナン」の方が好きかなあ・・・
ラベル: ヨーロッパ史
ベルリンの壁崩壊を時代背景とする純愛小説
1989年11月9日、ベルリンの壁、崩壊。
東ヨーロッパの自由化を象徴するこの出来事は、「自由に西ドイツに出入りできる」というスポークスマンの発言、群衆に発砲できないと判断した警備隊員の決断、何よりもゴルバチョフの改革をきっかけとして体制による締め付けに「蟻の一穴」が開き、自由を求める市民のエネルギーが噴出したことにある。
東ドイツの崩壊を背景に、前作「プラハの春」とは似て非なる恋愛模様を描く(頭の固いことを言うと、モラル的にどうよっ・・・?とも思うが、やはり美しく気高い恋愛と言いたい)。
ベルリン観光
ラベル: ヨーロッパ史
プラハの春 激動の時代と外交官の純愛
1967年、チェコスロバキアの首都、プラハで、ソ連のくびきから離れようとする自由化運動の波が広がった。しかし、その試みは、強大なソビエトの軍事力の前に阻まれてゆく。
激動の東ヨーロッパの歴史の中で、日本人外交官とドイツ人母娘との人間関係、そして美しくも哀しい恋愛・・・現役外交官が書いた大河歴史・純愛小説!
とっつきにくいかもしれないが、読めば絶対に面白い。
宝塚でも上演。
プラハ観光案内
スメタナ わが祖国 は、小説「プラハの春」で常に流れる音楽・・・この曲が、現実世界と作品世界とを結びつけてくれる。
ラベル: ヨーロッパ史
金曜日, 5月 12, 2006
安保闘争・・・実現しなかった革命(フィクション)
北方謙三のハードボイルド小説。
安保闘争の時代、もしもアメリカ軍の軍人がデモ隊に発砲していたら暴動が起きていたか?その暴動を上手にコントロールできたら、革命が成功したか?
1960年代を生きた学生達の、奇抜な軍略とその蹉跌・・・
そんな計画が実現しなくて良かったとも思いつつ、その蹉跌がなぜか哀しい。
クールでホットな北方ハードボイルドの傑作。
水曜日, 5月 10, 2006
明治維新に埋もれていった志士の人生
北方謙三の書く小説の主人公は、クールでいて内に情熱を秘めている。文体はスパッと切りつけるような文体。特徴は同じだけれど、皆、それぞれに個性がある。
相良総三は、純粋に民のことを考え、自らの理想と信念のために命を捨てる覚悟で、幕末の動乱を駆け抜けた。但し、あまりに純粋すぎたために、政治の世界に裏切られ、歴史に埋もれていった。
相良総三と赤報隊のことは、心に刻みつけておきたい。
北方の歴史小説は、歴史的にはマイナーだが、魅力のある人物を教えてくれる。
ラベル: 日本史
月曜日, 5月 08, 2006
平家物語の世界を面白く、身近に
もしも、自分が歴史上の人物だったら・・・?
現代に生きる高校生3人が、平安時代末期にタイムスリップしてしまい、それぞれ自分が、「巴御前」「武蔵坊弁慶」「北条義時」だったと気づいてしまう。
自分の運命に気づきながら、それぞれが自分の人生を生きていく・・・
平家の繁栄、滅亡と鎌倉幕府の成立までの時代。
その時代を、身近に面白く理解できる。
一般の歴史小説よりも感情移入しやすく、読み始めたら止まらない
「タイムスリップ」という仕掛けを使いながらも、歴史の流れをきちんと押さえている好著。
源平船合戦(壇ノ浦の合戦の再現)
ラベル: 日本史
土曜日, 5月 06, 2006
日本の古典に、気軽に接する
新源氏物語(上)
霧ふかき宇治の恋(上巻)
源氏物語を、原典の物語を損なうことなく、とても読みやすく現代語訳した(というより、読みやすい小説として書き直した)もの。
「霧深き宇治の恋」は、光 源氏の子、薫の物語。「新源氏物語」と「霧深き宇治の恋」を読んで、源氏物語は完結する。
田辺聖子は、ほかにも、百人一首、おちくぼ姫、枕草子等を書いており、日本の古典に気軽に親しませてくれる。
特に、中学生・高校生は必読。
霧ふかき宇治の恋(上巻)
源氏物語を、原典の物語を損なうことなく、とても読みやすく現代語訳した(というより、読みやすい小説として書き直した)もの。
「霧深き宇治の恋」は、光 源氏の子、薫の物語。「新源氏物語」と「霧深き宇治の恋」を読んで、源氏物語は完結する。
田辺聖子は、ほかにも、百人一首、おちくぼ姫、枕草子等を書いており、日本の古典に気軽に親しませてくれる。
特に、中学生・高校生は必読。
金曜日, 5月 05, 2006
鯨統一郎ワールド ミステリ編
「九つの殺人メルヘン」 「すべての美人は名探偵である」
「九つの殺人メルヘン」は、グラスを傾けつつ酒場の片隅で謎を解く、名探偵桜川東子の登場作品。
刑事事件の謎を、グリム童話になぞらえ、人間の心理や現場の状況を解き明かしていく・・・酒場の片隅で謎を解くというやり方や、説得的な論証方法等、「邪馬台国はどこですか」によく似ている。
「すべての美人は名探偵である」は、「邪馬台国は・・・」でおなじみの早乙女静香と、桜川東子がコンビを組み、「ずいずいずっころばし」の謎をからめて、事件を解決していく。
お色気シーン(?)あり。
鯨統一郎ワールド 歴史ミステリ編
宮田六郎と早乙女静香が繰り広げる歴史推理。
邪馬台国東北説、聖徳太子と蘇我馬子と推古天皇同一人物説等、一見すると馬鹿馬鹿しいように思える見解を、説得的に論証している。これを読むと、この本の見解に対する専門家の意見を聞いてみたくなる。
その意味で、歴史ミステリーの入門書として最適か?
八幡平観光協会
ちなみに、私は、織田信長自殺説には賛成できません・・・
宮田六郎と早乙女静香、世界史版。
詳しいことは知らないけれど、「アトランティス=ソクラテス説」は、私は正しいと思いました(プラトンの著作も、何冊か読んだことがあるので、プラトンのソクラテスに対する思い入れのようなものもわかりますし・・・)。
水曜日, 5月 03, 2006
東京裁判
朝日新聞のアンケートによると、東京裁判の内容を知らない人、東京裁判があったこと自体を知らない人が70%を占めているという(そのうち、裁判があったこと自体を知らない人の比率は17%、朝日新聞5月2日朝刊)。
これは、戦後教育の誤りだと思う。思想的に右か左かは関係なく、東京裁判を知らなければ、戦後日本の政治・外交がわかるはずがない。良くも悪くも、東京裁判の歴史観が、戦後の出発点なのだから。
日本の「大東亜共栄圏」構想に光(アジアの解放)と陰(植民地政策の推進)があるように、東京裁判にも光(一部の公正な裁判官と熱心な弁護人)と陰(勝者による一方的裁判)とがある。
映画「東京裁判」は、政治的に偏ることなく、その光と陰を淡々と描き出す。事実の重みと迫力が、時間の長さを感じさせない(劇場公開のときは、中途で休憩時間があったが・・・)。
日本国民として、一度は観るべき映画である。
ラベル: 日本史
火曜日, 5月 02, 2006
戦後日本の原風景
「鐘の鳴る丘」(ビデオ)
戦後日本の復興は、こういうところからスタートして復興した。
戦災孤児たちが、自分たちの境遇に負けず、明るくたくましく生きていく姿に勇気づけられる。
親や教師が、戦時中のことや戦後のこういうことを、きちんと語っていけば、青少年はもっと健全に育っていくのではないか。
その点で、早くDVD化されることが望まれる映画である。
四国よいとこ ← このページで主題歌「とんがり帽子」が紹介されている。
ラベル: 日本史
復旧完了
昨日、「トラックバックができない」と思って、いろいろやっているうちに、表示がおかしくなり、どうして良いかわからなくなったので、いったんブログを削除し、復旧することにしました。
茶目子の1日・・・やんちゃなお嬢さんの1日
「茶目子の1日」のCD。
写真がないのが、残念。
私が子供の頃、祖母が歌って聞かせてくれていた歌。
「雀がお庭の松の木で」ちゅんちゅく鳴いている朝の風景、「お皿にあるのは、ぶどう豆♪ おんなじ豆でも納豆は♪ 私にゃ臭くて食べられない」という朝食風景、学校では算術と読本でほめられ、おうちに帰ってからそれを報告し、お母さんにほめてもらうと「活動写真に行きたいわ。」とおねだり。そして、「活動写真は面白い♪ いくら観ても、まだ観たい♪」「今度の日曜、また来よう♪」で終わる。
裕福な家のお嬢さんなんだろうなという感じです。「ライオン歯磨きで、歯を磨く♪」なんです。
ちょっと、やんちゃで生き生きしている、昔の少女の雰囲気が良く出ているし、歌自体も面白くて、好きです。私の子供にもCDを聞かせているので、3歳児が「夜が明けた♪ 夜が明けた♪」と歌っています。
心とは何か? 私とは何か?
身も蓋もなく、一言で言ってしまえば、「人間の思考や行動というものは、所詮、外界からの刺激(入力)に対するフィードバックとしての出力にすぎず、心というものは、記憶を保持しやすくすることによってフィードバックを効率よくするための道具である」という仮説。
私は説得力を感じる。但し、肉親を亡くした人に安らぎを与えるための宗教か、または、これに代わる何らかの思想は必要だろう。
なお、この本に記述されている例だが、「私」とは何か?
例えば、脳移植手術などで(映画「アイランド」)、古い肉体と新しい肉体を交換した場合には、「私」が新しくなったという実感は得られるかもしれない。しかし、脳に蓄えられたデータを完全にコピーして新しい肉体に入力した場合(コピーだから、「古い身体」には意識もそのまま残っている)、「私」は、新しい肉体を「私」としては認識せず、「他人」として認識すると思われる。この違いは何だろうか?
「男たちの大和」も良いけれど・・・
日本人として、太平洋戦争のことは知っておくべきでしょう。
「連合艦隊」は、太平洋戦争の流れ(真珠湾以降)をおおまかにつかむことができるという意味で、お勧めです。また、「トラ トラ トラ」は、開戦時の状況をつかむことができるという意味で、お勧めです。
「男たちの大和」も良いけれど、「男たちの大和」には違和感を感じるし(たぶん、現実の雰囲気は「連合艦隊」の方が近いのではないかと・・・)、舞台も限定しすぎと思います。
「パールハーバー」は観てないけれど、様々な批評を読むと、観る価値はなさそうですね。
ラベル: 日本史
ショコラ・・・戦う自由主義
フランスの小さな村に流れ着いた母娘が、チョコレートショップを開店する。
キリスト教の教義と古い因習にとらわれた村人たちの、かたくなな心を、自由を愛する母娘の態度や甘いチョコレートが溶かしていく、ハートウオーミングストーリー・・・
しかし、ちょっと斜めに見ると、「自由のために戦うアメリカ万歳」とも見えてしまう。
「宗教の教義と古い因習」にとらわれた人々を、「自由を愛する」アメリカ軍が救っていく・・・というように。
もっとも、ラストで「北風は誘います。自由のための新しい戦いに・・・でも、戦いは他の人にまかせましょう」というメッセージが流れるので、反戦映画とも見えるのかなと・・・(考えすぎ?)">
本能寺の変の真相・・・?
本能寺の変は、戦国時代最大の謎とされている。
本書は、共謀者(黒幕)がいたという主張を否定し、明智光秀が単独で計画的に行ったという立場をとっている。
確かに、当時、織田信長に逆らう危険の大きさを考えると、確実性にも乏しく、リスクのみ大きいこのような作戦に、共謀者がいたとは思えない(共謀すれば、必ず、情報漏洩のおそれが起きる)。
そのうえで、事件の推移を追いながら、推論を積み重ねていき、「なぜ、1万3000人もの軍隊が、他の織田軍に怪しまれずに本能寺を包囲するまで行動できたのか」「なぜ、織田信忠の襲撃が遅れたのか」等の疑問に、説得的な回答を与えている。
なお、織田信長の遺体が発見されなかった理由として、津本陽氏は小説「本能寺」の中で、本能寺に火薬が大量に備蓄されていたという見解を紹介されている。
本書は、共謀者(黒幕)がいたという主張を否定し、明智光秀が単独で計画的に行ったという立場をとっている。
確かに、当時、織田信長に逆らう危険の大きさを考えると、確実性にも乏しく、リスクのみ大きいこのような作戦に、共謀者がいたとは思えない(共謀すれば、必ず、情報漏洩のおそれが起きる)。
そのうえで、事件の推移を追いながら、推論を積み重ねていき、「なぜ、1万3000人もの軍隊が、他の織田軍に怪しまれずに本能寺を包囲するまで行動できたのか」「なぜ、織田信忠の襲撃が遅れたのか」等の疑問に、説得的な回答を与えている。
なお、織田信長の遺体が発見されなかった理由として、津本陽氏は小説「本能寺」の中で、本能寺に火薬が大量に備蓄されていたという見解を紹介されている。
ラベル: 日本史
「悪法も法」と民主主義
「悪法も法なり」。この言葉は、形式的に「どんな法でも、法は守らなければならない」というところだけがクローズアップされ、批評されやすい言葉である。
しかし、この言葉は、本来、アテネの哲学者ソクラテスの魂の叫びである。
ソクラテスは、民主主義を愛するからこそ、自らを告発する不当な裁判においても、おそれることなく、こびることなく自説を展開する。どのような刑が妥当と考えるか、自分の意見を述べるときにも「自分にふさわしいのは迎賓館」と、小気味よく言い放つ(ソクラテスの弁明)。
そして、有罪・死刑が決まった後も、その信念に基づいて、死を受け入れる。 「自分はこれまでアテネの法を信じ、アテネの法に守られて生きてきた。その法が自分にとって都合が悪いからと言って逃亡するということは、自分に都合の良いときだけ利用して都合が悪くなると逃げるという意味で卑怯だ。そして、そのようなことが正当化されるなら、結局、法制度そのものを崩壊させることになる。自分は、アテネの民主主義を愛するから、その崩壊を導くことは出来ない。」これが、「悪法も法なり」の本当の意味である(クリトン、パイドン)。 「悪法も法」を批判することは簡単である。
しかし、民主主義社会では、その「悪法」を作った責任者は、国民1人1人なのである。日本における「政治的無関心」「低い投票率」「ワイドショー政治」そういった中で平然としている人たちが、「悪法」に抗議することはできるのだろうか?国民1人1人の成熟が必要ではないか? 現代でも、ソクラテスの著書を読む価値は十分にあると思う。
ラベル: ヨーロッパ史